進化を続けた恐竜1:大 絶滅

 

 

中生代・白亜紀、6月 の晴れた日の午後、トロオドンの一群が、トリケラトプスを追っていた。白亜紀後期から始まった重力の増加で、この頃にはほとんどの恐竜は絶滅してい た。 トリケラトプスは、最後に残された草食恐竜の一つなのだ。決して小型とはいえない恐竜だが、その極端に頑丈な四肢のおかげでこの時期まで、何と か生きのびてこられた。

この所、小さな哺乳類や爬虫類ばかりしか口にしていなかったトロオドンたちにとってみれ ば、久々の大きな獲物である。トロオドンたちは、トリケラトプスの群れの中に動きの緩慢な老齢の個体を発見し狙いを定めていた。

トロオドン達は、23匹 が一組となり、巧妙に老齢のトリケラトプスを群れから追い出しにかかった。100頭 を超えるトリケラトプスの群れを徐々に追いかけながら、老齢のトリケラトプスが群れから取り残されるのを狙っていたのだ。

やがて、群れから追い出されたトリケラトプスは、最後の力を振り絞り、必死で崖の方に逃 げていく。その後を、トロオドンたちが、一斉に追いかけはじめた。

追い詰められたトリケラトプスは、崖にポッカリと穴をあけた洞窟を発見し、その中に素早 くもぐりこみ奥の暗闇に身を隠した。トロオドンたちは、一瞬、トリケラトプスを見失ったが、すぐに洞窟に逃げ込んだ事を察知した。トロオドンが、洞窟 に足を踏み込むと、そこは真っ暗で何も見えなかった。

賢いトロオドンたちは、闇雲に獲物を襲うような事はしない。なぜなら、トリケラトプス は、頭上に3本 もの巨大な角を持っていて、反撃されれば小さなトロオドンにとっては、かなり危険なのだ。通常、トロオドンぐらいの大きさしかない恐竜は、トリケラト プスのような大型の草食恐竜は襲わないのだが、トロオドンだけは違っていた。巧みな連係プレーで、時間をかけ巨大な草食恐竜を仕留め食料にしていた。  

幸い、トロオドンは大きな目を持っていたので、洞窟の暗闇に目はすぐなれてきた。

トリケラトプスは、案の定、洞窟の突き当たりに身をかがめている。

こうなれば、もうこっちのものである。トロオドンは、ゆっくりとトリケラトプスを取り巻 くように迫っていった。そして、リーダーの号令の下、一斉に獲物に襲いかかった。 

トロオドン達が、トリケラトプスの首筋に鋭い歯で噛み付いた瞬間、ものすごい閃光が洞窟 を貫いた。あまりの眩しさにさすがのトロオドン達も、獲物から離れざるを得なかった。今まで経験した事も無い、強い光に包まれた恐竜たちが、あっけに 取られ立ちすくんでいると、今度は耳を劈く轟音とともに突風が吹き寄せ、大地に衝撃が走った。

突風に突き飛ばされたトロオドン達は、散り散りになり我先にと物陰に隠れていった。

洞窟の入り口は、一瞬にして崩れ落ち恐竜たちは再び完全な闇に包まれてしまった。真っ暗 闇の中、なおも轟音と鈍い震動が続いている。やがて、洞窟の中は耐え切れないほどの暑さに包まれ、轟音と震動は、それから数日間も続いた。

その間、成す術も無く立ち尽くしていた、トロオドンのリーダーは、やがて空腹に耐えきれ なくなり、トリケラトプスの匂いのする方へ、ゆっくりと歩いていった。その足がトリケラトプスを捉えた瞬間、狂ったように襲い掛かった。騒ぎを聞きつ けた、他のトロオドンも加わり、トリケラトプスはあっという間に殺されてしまった。

暗闇での、晩餐を終えたトロオドンは、今度は出口を探しに向かった。ここにじっとしてい ても、やがて死んでしまうのは明らかだからだ。しかし、どんなに力任せに押してみても、崩れた入り口はびくともしない。トロオドン達は、むなしい作業 を力が続く限り繰り返した。

さすがのトロオドンも体力が尽き果て、あきらめかけた頃、再び大きな震動とともに洞窟の 一部が崩れ、生暖かい風が吹き込んできた。我先をきそって出口に向かったトロオドンたちは、衝撃の光景を目にする事になる。

不気味な赤い空に覆われた外の世界では、木々はすべてなぎ倒され、遠くに赤々と燃え上が る炎がいたるところであがっている。この瞬間、中生代は終わったのだ。

 

---進化を続けた恐竜2: サバイバルへ続く---

 


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