ジュラシックミステリー発売記念

進化を続けた恐竜 

地球の軽い重力のもと大繁栄を遂げた恐竜は、白亜紀後期、重力の増大とともに絶滅への道を歩みはじめた。そして白亜紀末、今から6500万年前、月とともに地球に捉えられていた小天体の幾つかが地球に衝突し、すでに絶滅寸前にあった恐竜に最後のとどめを刺した。こうして恐竜の楽園は、永遠に地球上から失われてしまった。

この時、もし恐竜が死に絶えることなく生き残ったとすれば、一体この世界はどうなっていただろうか。はたして、哺乳類はこれほど繁栄する事が出来ただろうか。

 

恐竜が生き残っていたら

恐竜の絶滅後、生物学的に恐竜に最も近い鳥類は、主に空中でのニッチを埋める形に進化を遂げた。恐竜がいなくなった事により、空白になった地上のニッチの大半は、現在哺乳類により埋められている。もし、大絶滅を小型の恐竜の一部が生き残る事が出来たとしたら、世の中はどう変わっていただろうか。

ほとんどの恐竜は、とにかく大きかった。おそらく草食恐竜で、生き残る事が可能なほど小さな恐竜は存在しない。唯一、生き残る可能性があるとしたら、コンプソグナトスのような、小型の肉食恐竜であろう。

しかし何とか、絶滅を逃れた肉食恐竜だが、今度は食料に困る事になる。何しろ、草食恐竜はもう存在しないのだ。哺乳類は、おそらく夜行性ですばしこかったため、恐竜が捕食することは難しかったのではないだろうか。昆虫や小型の爬虫類を襲い、食料にする以外に道は無い。ただでさえ食料が少ない上に、「核の冬」による食糧不足が追い討ちをかけるだろう。大絶滅を生きのびた肉食恐竜がいたとしても、やがて絶滅してしまう可能性が、最も高いと言えるだろう。

結局、重力が変わった場合、恐竜はどんなにがんばっても絶滅する運命にあったと言えるのでは無いだろうか。

しかし、それでも強引に恐竜が生き残った可能性を考えてみよう。

大型の恐竜は、とっくに滅亡したところに、とどめの隕石衝突が起こった。

隕石の衝突直後引き起こされた、大津波や地球規模の火災、地殻変動などで、残された恐竜を含む地上生物の大半は、短期間のうちに姿を消してしまう事は間違いない。

運良く、最初の災難を逃れた生物に、次に襲い掛かる脅威は、「核の冬」による気候の寒冷化だ。陸上は短期間のうちに極寒の地と化し、海中にもその影響はゆっくり浸透していったかもしれない。この寒冷化が、じわじわと生き残った生物を絶滅の淵へと追いやっていく事だろう。

もし、この時期まで大型の恐竜の一部が生き残っていたとしても、大量の食料を必要とした大型の恐竜は、間違いなくこの時点で死に絶えてしまう事だろう。

しかし、「核の冬」が持続するのは、せいぜい十数年と考えられている。この「核の冬」の後には、一変して温室効果による気候の温暖化がやってくるのだ。地上には、再び植物が芽生え、今まで以上に生い茂ることになる。それに伴い、草食動物たちが再び息を吹き返し、繁栄を始める。この時点まで、小型の恐竜が生き残る事ができれば、恐竜が完全に絶滅してしまうことは無いだろう。しかし、ほとんどの恐竜は、間違いなく「核の冬」を越す事は出来ない。 

つまり、「核の冬」の後には大量のニッチに空きが生じているわけだ。おそらく、空いたニッチを占領する哺乳類が出てくる事だろう。結果、地上では生き残った小型肉食恐竜と哺乳類の両方が、隙あらば、ニッチを奪い合う形で共存していくことになる。

さて、そんな中で先に知能を身につけ知的生命体へと進化するのは、恐竜であろうか、哺乳類であろうか。恐竜には、一つ有利な点がある。それは、すでに二本足で立っているという点だ。必要とあらば、いつでも手を道具として使用できる状態にあったのだ。恐竜の脳は、体の大きさの割には一般的に小さい。しかし、小型の肉食恐竜では、比較的大きな脳を供えていた。 

哺乳類との厳しい生存競争の中、そのような恐竜は更に知能を高めていく可能性が高い。

そして、そのような恐竜の中から遂に道具を使う恐竜が現れる。恐竜人間の登場である。 恐竜人間が先に、現在の人間が占めているニッチを占領できれば、もう哺乳類が進化して知性を備える事は無いだろう。そして、恐竜人間は収斂進化の末、現在の人間に近い形態を占めるかもしれない。

実は、恐竜が絶滅せずにそのまま進化を遂げて知性を持ったらどうなるかと言う事を、まじめに考えた学者が存在する。アメリカの古生物学者、デール・A・ラッセルは恐竜の中でも知能が高かったとされるトロオドンが、高度に進化したと考えてダイノソアロイドなる恐竜人間を考案している。

考案したと言っても、デタラメに考えた訳ではなく、ちゃんとした科学的データに基づいて、シミュレーションを行った。結果、恐竜においても、知的生物にまで進化をすると人間と同じような、完全な直立二足歩行にいたると結論付けた。ダイノソアロイドは想像図も公開されているので、見た事のある読者もいる事だろう。

しかし、私にはラッセル博士の考える恐竜人間は、あまりにも爬虫類系すぎるように思われる。ラッセル博士が言うように、トロオドンが進化して、恐竜人間が誕生すると言う考えには賛成であるが、私の考える想像図はずいぶん異なった形になる。

トロオドンは、白亜紀後期の小型肉食恐竜で、恐竜の中でも一番頭が良かったとされている。トロオドンの体重は、わずか50kg程度であったのに対し、脳重量は50gもあったと言う。この比率は、現在の類人猿と変わりが無い値である。又、トロオドンの目は非常に大きく、前面を向いていたため人間同様に立体視も出来たらしい。

更に、トロオドンの前脚には、3本の指が向かいあう形で付いていて、物をつかみ器用に操る能力をすでに備えていた。人間が知能を発達させたのは、二足歩行の獲得により自由になった手を器用に使いこなせることが出来るようになったことが、一番の原因とされている。自由になった手を使い道具を発明し、更にその道具でより複雑なもの作った事により知能を高めていったのだ。

つまりトロオドンも、知能を更に発達させる事が可能な身体的特徴を十分に備えていたわけだ。

もちろん、知的進化を遂げる種が絶対にトロオドンでないといけないと言うわけではない。しかし、たとえトロオドンでないとしても、小型の肉食恐竜の中から知能を発達させる恐竜が出てくる事は、間違いないだろう。なぜなら、小型の肉食恐竜は、すべて二足歩行で自由になる前脚を備えていた。更に、小型の肉食恐竜が大型の肉食恐竜に対抗する為には、集団で狩を行ったり、狩の方法を工夫したりと、知恵を使い食料を手に入れる必要性があったからだ。

トロオドンの、脳が大きく知能が高かったのもこの様な理由によるものと考えられる。

では、そのトロオドンから、恐竜人間が進化したと仮定してみよう。一体どのような姿になるのだろうか。まず、言えることはラッセル博士の考えるような、爬虫類系の恐竜人間には進化しないということだ。

最新の研究から白亜紀後期の小型の肉食恐竜は、羽毛を供えていた可能性が非常に高いのである。この様な、羽毛を備えた恐竜から進化した場合、やはり恐竜人間も羽毛を備えているだろう。人間と同じように、衣服の発明により体の羽毛は、薄くなるかもしれないが、少なくとも頭部には立派な羽毛を供えているに違いない。

次に、尻尾であるが、哺乳類ではあまり尻尾の役目は無いのに対して、恐竜では体のバランスを取る為の重要な役割があった。この様に重要な働きがあった器官が簡単になくなってしまうだろうか。たとえ、収斂進化の結果、人間と似た形態を取ったとしても、小さな尻尾がついている可能性のほうが高いと思われる。

その姿は、恐竜人間と言うよりもむしろ鳥人間に近いかもしれない。もしかしたら、ドナルドダックのような姿に進化する可能性もあるのではないだろうか。この恐竜人間には、Dinosapiens:ディノ・サピエンスと言う名前を付けることにしよう。

そして次に、トロオドンからディノ・サピエンスにいたる進化の過程をシミュレーションしてみよう。


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